価値のないものの
価値を高めることに
感じるロマン

子どもの頃は「メカ探偵ペンチ」を夢中になって読んだ。事件を解決するために大きなメカをドッカンドッカン生み出す…、そんなストーリーに魅せられ、モノづくりを将来の仕事にしようと決めていた。一方で、山や川で遊ぶ中で自然の岩や鉱物の成り立ちに興味を持ち、鉱物物理化学を専攻。就職活動では「モノづくり」「専攻分野を生かせる」「地元」というキーワードで、マイカをつくるトピー工業に縁を感じ、入社を決意した。

事業開発戦略センター
マイカ部
教育学部 理学科 卒
2009年入社

開発者が語るマイカの
新商品誕生秘話

 「マイカ」を知らない人に説明するとき、私は「宝石だよ」と答えています。土や海で採れる原料から、宝石をつくるように価値のあるものを生み出し、それがいろいろな人の手に渡っていく。私はマイカと向き合いながら、そんなロマンを感じています。天然の雲母と同じ構造を持った合成の鉱物が合成マイカ。そのマイカが一番生かされているのが化粧品です。原料の一部として使用されるのですが、化粧品特有のつき方、のび方、持ちの良さなどの機能性を併せ持つ商品にできるのが大きな特長です。
 私は入社後、念願のマイカ部の開発グループに配属。当時のヒット商品は「パールマイカ」でした。アイシャドーやチーク、ファンデーションに配合されているキラキラしたラメの化粧品原料として爆発的に売れていました。そんなパールマイカの品質をより高めていくための研究に携わることになりました。
 マイカ部での開発は、基本、一人で考え、実験し、評価して考察するというサイクルが繰り返されます。まずは、自分で研究の目標値を設定。とはいえ、化粧品は、ある物質の質を一定基準まで高めれば売れるというわけではありません。光沢性、使用性、また成形加工の際に粒子が割れてしまわないか…、さまざまな課題をどの程度までクリアするかを考え、思いつく限りの仮説を一つずつ検証し、ダメならまた振り出しへ…。そんな試行錯誤が約3年間続きました。そして、このラボ(実験室)スケールで得た知見をもとに、工場の大きな設備で量産化するためのパイロットスケールでの開発実験を行い、工場、技術グループの総力を傾け、約2年をかけてスケールアップに取り組みました。そして、最終的に、光沢やカラーバリエーションなど従来の倍のラインアップを開発し、新商品「ヘリオス」として無事市場に送り出されました。もちろん、化粧品には流行があるので、このパールマイカがヒット商品になるかはまだわかりません。ただ現在、多くの化粧品メーカーに採用していただけているという事実は、技術者として最高の喜びです。そして今後、私の関わった製品が全世界の女性に支持され、新たな流行を生み出すことを願っています。

宝石のような
価値

プロフェッショナルとしての誇り、
そして「宝石」を生み出す経験が、 次の未来への原動力

 その後、マイカ部の技術グループに異動し、仕事内容もガラッと変わりました。ここでは主にマイカ製造の生産技術担当として、工場の設備・品質・コスト改善に取り組んでいます。
 ある日のこと。「スクリューが壊れて、モーターが焼けた!」という現場の声。製造設備には、こういう問題がつきもので、私はすぐに原因究明に走りました。原因の多くは原料となる粉。粉にはさまざまな特性があり、5種類使用するうちの1種類を替えるだけでまったく違う性質となって、それが普段の設備に問題を引き起こしてしまうのです。粉の特性から同様の症例がないか、同時に設備の部品や構造に至るまでをひも解き、上司・先輩と議論を重ねながら、私は改善策を練り上げていきました。そうして改良された実機が無事納品を迎え、思い描いていた設備が具現化するときに、技術者としてのやりがいを強く感じます。
 ただそこが終わりではなく、実際に稼働している設備を見て、「こうすればもっとうまくいったのではないか?」という思いが生まれてきます。また品質・コスト・安全性・作業性など、すべての面にとことんこだわる現場や上司から厳しい意見をいただくこともあります。
 課題は尽きることがなく、挑戦も終わることがありません。ここにいる誰もが最高を目指すプロフェッショナルなのです。その一員としての誇りが、いつしか未来への原動力になっていました。
 以前、私が四苦八苦しながらも改善した設備に対して、「60点。ギリギリ可だな」と辛口のコメントをつけたのは、無骨で頑固一徹な現場の先輩たち。でも、毎日うれしそうに使ってくれている姿を見て、厳しくも温かい人たちに育てられていることに日々心から感謝しています。
 いつかは新製品開発に挑戦してみたいですね。マイカ部での「宝石」を生み出すための開発から製造までの経験はとにかく奥深く、発見と驚きの連続です。そこでぶつかる無数の困難や、乗り越える面白さの中で得られた知見は大いに役に立つはず。ぜひ皆さんと一緒に、新しいモノづくりに挑戦していきたいですね。

Message

私はトピー工業に入社して、社員一人ひとりのバイタリティに驚きました。開発、生産、営業…マイカ部すべての社員が、それぞれの仕事に対して「ここまでやるか!」というほどの粘り強さ、目標に向かって成し遂げようとする情熱を持っています。そして、一つひとつの製品に自信と誇りを持っています。また、全体を見渡せる規模の開発環境も大きな魅力の一つです。技術者として成長したい方には、トピー工業はまさに絶好の環境だと思います。

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